「限りある時間の使い方」オリバー・バークマン

ナイルの夕日
ナイルの夕焼け。煙は野焼き?

「限りある時間の使い方」(2022年)オリバー・バークマン

数千年前から変わらぬであろう、ナイルの夕日。それに比べ、人の一生はおよそ4000週間とあまりに短い。できることは限られており、何をすべきか、せぬべきか、選択する必要がある、というのが本書のメッセージ。(本書にナイル川は出てきません)

今更お勧めするまでもないベストセラーで、図書館で予約し3ヶ月ほど待ちました。備忘録として感想を綴ります。

著者は元新聞記者で、かつては効率と生産性を上げ、多くのタスクをこなすことに夢中になっていました。しかし、ある時ふと時間の有限性に気づき、「全てのことをこなすのは無理だ」と気づきます。どんなにタイムマネジメント術を駆使してタスクをこなしても、常に目の前には新しいタスクが立ちはだかり、時間に追われるのだと。そうした行動は、先の見えない将来をコントロールしようとする無謀な考えから生じるのだと。そして、生産性が叫ばれる今の時代に一石を投じます。

これまで「生産性」という言葉に疑いを持ったことがなかったのですが、確かに、と気付かされました。例えば旅行中、ガイドブックやSNSで見た場所をたくさん巡ることが目的になってしまい、その瞬間を楽しめないことがあります。あるいは、受験勉強に始まり、私たちは常に将来への準備に投資していますが、では、一体いつ、その果実を収穫し、幸せを味わうのでしょうか。う〜ん、身につまされます。

著者は、限られた時間で全てを体験することはできないという「諦め」こそが、自分を追い込むことから解放し、やるべきことに集中させてくれると、希望を繋いでいます。どうもある時、啓示を受けて、この真実に気づいたようです。体感的な「気づき」を伝えるため、ハイデガーなどから多くの引用があり、ややまどろっこしい表現が散見されました。ただ、最終章は繰り返し読みました。特に刺さったのが、以下の部分。

例えば、今の仕事を辞めるかどうかで悩んでいるとしよう。そんなとき「どうするのが幸せだろうか」と考えると、楽な道に流される。(中略)仕事を続けることが人間的成長につながるか(大きくなれるか)、それとも続けるほどに魂がしなびていくか(小さくなるか)と考えれば、答えは自然と明らかになるはずだ。できるなら、快適な衰退よりも不快な成長を目指したい。

「限りある時間の使い方」より

サラリーマンの方なら、仕事を続けるべきかどうか、一度は考えたことがあるんじゃないでしょうか。魂を大きくするか、萎ませるか。良い視点だと思いました。ただね、考えすぎると、どっちが「快適な衰退」で、どっちが「不快な成長」かすら分からなくなってくるんですよ。笑 

おそらく、まだ腑に落ちていない部分があると思います。時間を置いて、再度読み直したい1冊でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました